「ハローワーク」と聞くと、求職者が働き先を見つけるために通う施設というイメージを持つはずです。
たしかにハローワークでは、数々の求人情報を閲覧することができます。しかし、ハローワークでできることは求人情報を見るだけではありません。他にも就職活動において便利なサービスが多く存在します。
ハローワークを求人情報を見るだけの場所、と認識している方にとっては新しい発見になるかもしれません。本記事ではハローワークの概要や受けられるサービス、メリットについてご紹介します。
ハローワークとは

ハローワークとは、全国に約500カ所点在している厚生労働省が設置する公共職業安定所です。1日に17万人以上もの人が利用しており「職安」や「ハロワ」とも呼ばれています。
ハローワークは、求職者に対して働き先を紹介したりキャリアの相談をしたりするだけではありません。失業等給付を受け取るための雇用保険等の手続きなども行えます。
なお、ハローワークは求人の多さや無料で利用できるという特徴があり、一昔前までは、失業率をできるだけ下げるために作られた施設でした。最近では転職エージェントや転職サイトなども増えており、ハローワークのライバルと言える存在が増えているのが現状です。
>>ハローワークで正社員のお仕事を探しているなら「ハローワークで正社員になれるのか?仕事探しの流れも解説」の記事もおすすめです。

求人サイトとの違い
求人サイトは、求職者に対して働き先を提示するサイトのことです。企業は、サイトの運営者に対して求人情報の掲載費用を払うことで求人情報を掲載できます。
一方、ハローワークの場合、企業は無料で求人情報を掲載することが可能です。
どちらも求人情報を閲覧するために存在するという点では同じですが、両者には採用のスピードという違いがあります。
両者を比べた際、採用のスピードが速いのは求人サイトです。企業からすると求人の掲載費用が掛かっています。求人を公開し続けるとコストがたくさんかかってしまうため、求人サイトに掲載されている仕事は、比較的早く採用される傾向にあります。
しかし、ハローワークの場合、どれだけ求人情報を掲載しても費用がかかりません。そのため、採用を焦らずとも余計な費用を払い続ける必要がないということになります。
また、対人か否かも両者の違いと言えるでしょう。
求人サイトは、インターネット上で展開されているサービスなので、人との関わりはありません。一方でハローワークは、職員に助言を求めることもできるので人との関わりがあります。
つまり、採用スピードは速いが意思決定は自分で行うことを希望する場合は求人サイトがおすすめです。反対に、採用スピードは遅いが職員の助言が必要な場合はハローワークがおすすめだと言えます。
転職エージェントとの違い
転職エージェントとは、求職者のプロフィールをもとに専門のアドバイザーが適切な働き先を提案してくれるサービスです。一方ハローワークは、自分に適している働き先の求人情報を自分自身で探す施設を指します。
この点で比べると転職エージェントの方が優れているように聞こえるかもしれません。
しかし、転職エージェントは求人数が少ない傾向にあるため、求人数でいえばハローワークの方が優れていると言えます。目安として、ハローワークが約100万件、転職エージェントが約30万件です。
とはいえ、転職エージェントは特定の業界に特化したものもあり、ハローワークよりも優良な求人を紹介してくれることも少なくありません。
つまり、求人数は少なくても良いが手厚いサポートを受けたい場合は転職エージェント、反対にそこまで手厚いサポートは必要ないが、数ある求人の中から働き先を選びたい場合はハローワークがおすすめだと言えます。
派遣会社との違い
派遣会社は、登録することで働き先を紹介してもらう会社のことです。
働き先を得る手段という意味では、両者とも同じような存在だと言えます。しかし、派遣会社はハローワークよりも取り扱っている職種が多いうえに、働き先の時給が高い傾向にあるのが特徴です。
また、雇用関係も違いの1つだと言えます。
ハローワークにて紹介された働き先で働く場合、雇用主は働き先の企業です。一方、派遣会社にて紹介された働き先で働く場合、雇用主は派遣会社になります。
さらに、取り扱っている求人情報にも違いがあります。
ハローワークが扱っている求人は主に正社員の求人です。そのため、正社員しか受けられない手当や保険が適応されるという特徴があります。
しかし、派遣会社が扱っている求人は派遣求人であることが一般的です。そのため、正社員の手当や保険は受けられず、派遣社員としての手当や保険が適応されることになります。
ハローワークで受けられるサービスとは

ハローワークで受けられるサービスは以下の5つです。
- 求人紹介
- キャリア相談
- 書類選考や面接の対策
- 職業訓練
- 保険の手続き
求人紹介
ハローワークで受けられるサービスの1つ目は求人紹介です。この求人紹介は、ハローワークの主なサービスだと言っても過言ではありません。
ハローワークは、もともと失業率を下げないために作られた施設なので、求人紹介には特に力を入れています。
もしも、ハローワークにて求人情報を閲覧したい場合は、総合窓口にて求職者番号を登録しなければいけません。
なお、ハローワークの求人に応募するためには紹介状も必要になります。
紹介状とは、ハローワークが発行する応募のために必要な書類です。紹介状には、求職者の氏名や働き先の所在地、面接場所、採用の選考方法について書かれています。求職者が持ち歩く紹介状はコピーであり、原本はハローワークが保管しているのが一般的です。
なお、紹介状は求職者だけではなく求人情報を出している企業にとっても重要な書類です。
ハローワークに求人情報を出している企業は以下の2つの助成金を受け取ることができます。
- 若年者等正規雇用化特別奨励金
- 試行雇用奨励金(トライアル雇用奨励金)
これらは、ハローワークに訪れた求職者を採用した際に受け取ることができますが、紹介状がないと受け取ることができません。
したがって、紹介状は求職者にも企業にも重要な書類ということになります。
>>ハローワークでの仕事の探し方は「ハローワークでの仕事の探し方を解説!持ち物や服装も紹介」でわかりやすく解説しました。ぜひ参考にしてみてください。

キャリア相談
ハローワークで受けられるサービスの2つ目はキャリア相談です。
ハローワークには職員が在中しており、求職者のキャリアに関して相談に乗ってもらうことができます。就職のイメージが定まっていない人や就職に対して不安を抱えている人は活用しましょう。
実際に相談に乗ってもらう際は、歩みたいキャリアやそのキャリアを実現させるための方法を明確にしておくことが重要です。話がスムーズに進めばそのまま就職先を紹介してくれるケースもあるので、自分の要望はできるだけ具体的に伝えましょう。
なお、就職活動に関係のない相談も受けてくれます。例えば、現在の職場での人間関係や給与の問題などです。
キャリア相談は、このような悩みや不安を解決する方法の1つとして挙げられるので、積極的に活用してください。
書類や面接の対策
ハローワークで受けられるサービスの3つ目は書類選考と面接対策です。ハローワークは、就職活動を応援するサポートの1つとして書類選考や面接の対策を提供しています。
書類選考や面接の対策をしてもらうメリットは、改善点を第三者から聞けることです。ハローワークの職員によっては実際に人事を務めていた職員もいるため、友人や家族とは違う観点からアドバイスをしてもらえます。
書類選考や面接の対策をしてもらう場合は、ハローワークの総合窓口に出向いて利用登録と申し込みをしてください。ハローワークによって電話受付しているところもあれば、窓口でしか受け付けていないこともあるので、最寄りのハローワークがどのような対応をとっているかをあらかじめ確認しておきましょう。
無料で何度でも利用可能なので、納得がいかなかったり自信がつかなかったりする場合は何度でも通うことをおすすめします。
職業訓練
ハローワークで受けられるサービスの4つ目は職業訓練です。
正式名称を「公的職業訓練(ハロートレーニング)」称し、以下の2種類に分けられます。
- 公的職業訓練
- 求職者支援訓練
公的職業訓練は失業保険を受給している求職者が対象となり、求職者支援訓練は失業保険を受給する資格がない人が対象になります。
職業訓練は、就職活動に役立つ知識やスキルを会得することができる講座です。基本的に講座費用は不要ですが、テキスト代や試験の受験料は必要になります。
また、内容や期間は講座によってさまざまです。一般的には3〜6ヶ月の講座が主ですが、中には1年や2年といった長期の講座もあります。
なお、講座を受けることができる方は求職者だけではありません。学生や職についている方も費用を支払うことで利用することが可能です。
実際に利用されるのであれば、ハローワークの総合窓口にて申し込みを行い、書類選考や面接などを受けてください。
保険の手続き
ハローワークで受けられるサービスの5つ目は保険の手続きです。
ハローワークでは、雇用保険の手続きを行い失業等給付を受けることができます。失業等給付とは、失業した人が次の就職先を決めるまでの生活費として支給される給付金です。金額としては、前職でもらっていた給与の5〜8割が支給されます。
失業等給付には給付のための条件が設定されており、その条件を満たさないと給付される事はありません。一般の離職者の場合、離職までの2年間に雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上あることが条件です。
また、上記と同様に特定理由離職者や特定受給資格者にも給付の条件はあるので、あらかじめ確認しておきましょう。
給付の条件の一つである「ハンコ」については下記の記事で、詳しく解説しています。

ハローワークに行く際の服装

ハローワークは働き先を探しにいくのが主な目的の施設です。そのため「ハローワークに行く際は決まった格好をしないといけない」と考える方もいるでしょう。
では、実際にハローワークに行く際は、どのような格好をしていけば良いのでしょうか。この章では、ハローワークに来ていく服装に関して解説していきます。
ハローワークに規定の服装はない
結論を述べると、ハローワークに行く際は決まった服装はありません。
ハローワークに初めて行く方もそうでない方も、決まった服装を用意しなくても問題ないです。仮に普段着で行ったとしても問題ありません。
とはいえ、限度はあるのであまりにもだらしない服装や派手な服装だと指摘されてしまうでしょう。
おすすめの服装としては清潔感のある服装です。夏場でも肌の露出を抑えて、落ち着いた色の服装を心がけてください。
なかには「働き先を見つける場所なのでスーツで行くべき」だと考える方もいるはずです。しかし、ハローワークは就職のサポートを受ける場所であって、選考の場所ではありません。そのため、普段着のような服装であっても、就職活動が不利になることはないでしょう。
面接対策に行く際はスーツが無難
前章で説明した通り、ハローワークに行くのに決まった服装があるわけではありません。しかし、面接対策に行く際はスーツを着用することをおすすめします。理由は面接本番を意識することができるからです。
面接はどれだけ練習していても、本番になると緊張してしまいます。そのため、練習の際にはできるだけ本番と同じ環境に近づけた方が良いですが、面接官も面接会場も用意することはできません。
しかし、唯一本番と同じ環境にできるものがあります。それが服装です。服装だけは本番と全く同じものを用意できるので、本番の緊張を和らげるためにも面接の練習の際はスーツの着用を心がけましょう。
ハローワークに行く際の持ち物

ハローワークに行く際の持ち物は目的によって異なります。
例えば、仕事を探す目的の人が初めてハローワークに行くのであれば、ペンとメモ帳さえあれば問題ありません。求人の閲覧方法やマイページの使い方などをメモするだけにとどまるからです。
しかし、雇用保険の手続きに行く際は以下の書類が必要になります。
- 雇用保険被保険者離職票1・2
- 個人番号が確認できる書類
- 身分証明書
- 写真
- 印鑑
- 通帳・キャッシュカード
このように、ハローワークに行く目的によって持ち物は大幅に異なります。そのため、ハローワークに行く前には、自身に何が必要かを確認してから行きましょう。
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ハローワークを利用するメリット

ハローワークを利用するメリットは以下のとおりです。
- 利用者に制限がない
- 求人の数が多い
- 職業訓練やセミナーを受けられる
利用者に制限がない
利用者に制限がなく、誰でも利用できるのがハローワークのメリットです。国が運営している施設ですので、就職活動のサポートを受けたいと考えている人であれば誰でも利用できます。
さらに、一部の講座を除けば、あらゆるサポートを無料で受けることも可能です。資格や特定のスキルを持たない方は、このメリットはより魅力的に感じるでしょう。
とはいえ、就職のサポートを行う会社はハローワークの他にも多く存在します。しかし、それらの会社は求職者と企業を結びつけることによって収入を得ていることが多いです。
つまり、求職者の中でも採用が決まりそうな優秀な人を選んでサポートをする傾向にあります。そのため、資格や特定のスキルを持たない方はなかなかサポートを受けられないケースも珍しくありません。
その点でハローワークは国が運営しているため、利益追求は重要視されていません。そのため、ハローワークはどなたでも無料で利用できるというわけです。
求人の数が多い
求人の数が多いのもハローワークのメリットです。
ハローワークは求人情報を掲載する費用が必要ないため、多くの企業が求人を掲載しています。そのため、求人サイトに求人情報を掲載できないような中小企業の求人も少なくありません。
ネット上にはない求人を見つけたい方にとっては魅力的なメリットだと感じるでしょう。
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職業訓練やセミナーを受けられる
ハローワークでは職業訓練やセミナーを受けることが可能です。
職業訓練やセミナーを受けることにより、社会に出るにあたって必要な知識やスキルを鍛えられます。
どの訓練もどのセミナーもハローワークの外だと数十万円もの受講料がかかるものばかりです。なかには、テキスト代として費用を取られる場合もありますが、コストパフォーマンスを考えると魅力的なメリットでしょう。
ハローワークのデメリット

ハローワークのデメリットは以下の3つです。
- 開いている時間に限りがある
- ブラック企業の求人に注意する
- 就職活動のすべてを担当してくれるわけではない
開いている時間に限りがある
ハローワークは、平日の8時半〜17時15分までと営業時間が限られています。そのため、土日祝日や夕方以降は利用できません。
平日の昼間に活動できる方は問題ありませんが、夕方以降や土日祝日しか活動できない人にとってはデメリットになってしまいます。
なかには、土曜日や夕方以降も利用できるハローワークもありますが、一部に限られるので期待はできません。
ブラック企業の求人に注意する
「ハローワークの求人にはブラック企業が多い」と耳にすることがあるはずです。理由としては、掲載のためのハードルが低いことが挙げられます。
掲載のためのハードルが低いということは、少しばかり悪質な内容でも掲載することが可能だということです。さらに、掲載のための費用が不要なのであれば、その求人は半永久的に残り続けます。この仕組みが「ハローワークの求人にはブラック企業が多い」と耳にする理由です。
そのため、ハローワークで求人を探す際は、内容を精査して選びましょう。
就職活動のすべてを担当してくれるわけではない
ハローワークは就職活動のサポートをしてくれる施設であって、代行をしてくれる施設ではありません。そのため、自分から行動しない限り就職が決まることはないでしょう。
また、ハローワークの求人を覗いたからといって、希望する求人が見つかるわけではありません。万が一、希望する求人が見つからないのであれば、求人の条件を広げるか根気良く探し続ける必要があります。
まとめ
このように、ハローワークとは求職者が就職活動のサポートを受けるために国によって作られた施設です。基本的には誰でも無料で利用することができ、求人情報の閲覧や書類選考や面接の対策をすることができます。
また、失業者が再就職先を探すまでの生活費となる失業等給付を受けるための手続きも行うことができます。
なお、ハローワークは求職者だけでなく、学生や職に就いている方でも利用できるのでぜひご利用ください。